黒木眼科医院
目の病気と食物について
最近の海外の研究から by Sara..E.Smith
ある種の目の病気は、食習慣の変更で予防できる可能性がある。明確な結論は出されてないが、ある特殊な食物や、微量元素や抗酸化作用のある物質は、年令とともに悪化するような目の病気の進行を遅らせたり、発病を防ぐことができると考える眼科医もいる。又、抗酸化作用に富む種々の食物が目の健康増進に役立つと推奨する医師もいる。又、ダイエットを行うときに、目の病気を予防するために不足する栄養素を補うことをすすめる医師もいる。
1、加齢黄班変性の予防
※ ルテイン、ゼアキサンチンなどのカルテノイド色素を含む食物(表1に示すホウレン草など緑葉の食物)の摂取が有用である。カルテノイド色素は黄班部の色素を作るとともに、黄班部の老化を防止し、黄班部を障害する青い光線から網膜色素上皮、光受容器を譲り、網膜に対し抗酸化作用をもつ。角膜と水晶体は紫外線を除去できるが、有害な可視光線(青い光など)は眼底まで通す。
黄班部色素の厚い人はカルテノイド色素を多く摂取している。これらの色素は網膜を光化学的又は酸化的障害からまもる。ルテインを多く含む網膜は黄班変性を生じにくい。黄班変性の人は毎日10mgのルテインを摂取するとよい。
  • 青身の魚;  イワシ、サンマ、サバなどに含まれる脂質はルテインを吸収しやすくする。
  • ビタミンA.C.E..は抗酸化作用に富み、黄班変性に有用である。ビタミンC300mg/回×3回/日に分けて食前にとる。食後に飲むと有用な銅やクロムを排泄してしまう。ビタミンCはとりすぎてもよいが、すい臓と硝子体に蓄積され、繊維性変化を生じさせる可能性もある。又、ビタミンCは有害な金属を排除するが、有益な銅、クロムも排泄する。
  • コレステロール; 黄班変性の人はコレステロールが正常でもさらに低下させると、進行が抑制される。低コレステロール血症は、黄班の血流を改善し滲出班を減少させる。蛋白質のとりすぎも又、黄班変性を悪化させる。
  • ビタミンB群; 老人性黄班変性の危険因子である心臓病を予防する
  • 亜鉛; 1日15mg以上の亜鉛の摂取はHDL粒子を減少させる。HDL粒子は心臓を保護し、カルテノイド色素の60%を輸送する。15mg以下が望ましい。

加齢黄斑変性(滲出型と萎縮型)の危険因子と予防と治療について

黄斑とは?

 黄斑は眼底の網膜の中心部の円形の部分です。名の如く周囲に比べやや黄色を帯びています 黄斑の中心部はくぼんでおり、中心窩とよび視力が最もよく出るたいせつな場所です。黄斑はみつめようとする物を詳細に認識する形態覚(中心視力)と色を区別する色覚をもっています。黄斑には物がよくうつるよう邪魔になる血管がありません。ここは酸素を最もよく必要とする部分ですが、網膜のうらにある血液の豊富な脈絡膜から酸素をもらっています。物を見る時よく使うため、疲労しやすく酸素が不足すると問題が起りやすくなります。目をカメラ にたとえると、角膜・水晶体がレンズで、網膜・脈絡膜がフィルムで、その中心が黄斑です。

発病の頻度、男女の差、患者数は?

  日本では60才以上に多いのですが、50才代にも発症します。50才以上の人口の約100人に1人(2007年)で4050万人おられます。外国では女性の方がやや多いですが、日本では喫煙が男性に多いためか男性が女性の3倍以上となっています。日本では中途失明の第4位です。

発病の原因、病気がどの様にして起るか、自覚症状は?

  この病気は関連遺伝子も発見されているが、環境も発病に大きく影響し、空気が清く食物も 新鮮な孤島では発症頻度が明らかに低く、発病の真因は不明です。黄斑は毎日日光にさらされ日 焼けをおこし、しみが生じていますが、このしみ(リポフスチン)は網膜色素上皮という部位で網膜の神経細胞が 貧食されて、生じたものですが、健常人では消失します。加齢黄斑変性になりやすい人では肉やマーガリンなどを多く食べると色素上皮の後のブルック膜に脂肪がたまり(目のメタボ)リポフスチンを除去する能力が低下するため早い人では30代 からリポフスチンが黄斑部に蓄積しはじめ脂肪を含むドルーゼンとよばれる黄色のより大きなしみに変化し 、これが増加すると脈絡膜から黄斑に酸素が十分に送られなくなり、酸素を送るため脈絡膜から 新しい血管がのびてきます。この新生血管はもろく血管の中の血液成分の一部がしみ出たり、破れて出血し黄斑部がはれてきます。これが「滲出型」です。新しい血管もできず酸素不足で網膜 が枯れてくるのが「萎縮型」です。発症頻度は前者が後者の10倍以上です。一度出血を起こし黄斑部が障害されると、最新治療によっても視機能を完全に回復させることは困難です。発病の予 防と発病後早期に病変の進行を防ぐことが一番です。最近ではアルツハイマー病の患者さんの脳内に認められる老人班に含まれるアミロイドベータという蛋白質が黄斑のドルーゼンの中にも発見されています。
症状は見ようとする物が歪んだり、小さく 見えたり、暗く見えたり又ほとんど見えなくなったりします。しかし周辺部は見えなくなること は通常はありません。失明といっても全く光を失うことはなく社会的失明と言います。

発病予防のため、日常生活で気をつけることは?                    

・ 第一に青色光は波長が短く振動数が高くエネルギー密度が高いので、黄斑にしみ(リポフス チン)を生じやすいので青以外の色のサングラスをかけることです。電灯や太陽光やパソコン画 面などにも青色光は含まれます。紫外線は水晶体でほとんど吸収され黄斑には殆ど届きません。 軽度の白内障は黄斑を光から護るのであまり濁っていないのに白内障手術をうけると危険な場合があります。 次に喫煙により脈絡膜の血流と、血液中の有用な酸素が減少し有害な活性酸素が増加し、黄斑に酸素欠乏が起り、又炎症が生じリポフスチンが増加します。高血圧、心臓病、高コレステロール血症では血流が十分に目に届かず発病の危険因子となります。これらの病気の予防と治療が必要です。生活様式が活動的で週3回以上の一汗かく程度の運動を行っている高齢者では、黄斑の裏の脈絡脈の血管壁が強くなり炎症が減弱し発病の危険性が運動しない人より70%低下したとの研究報告があります。

発病予防に有効な栄養素はルテイン、ゼアキサンチン、ω―3脂肪酸(EPADHA)、ビタミンABCE、亜鉛などです。ルテイン、ゼアキサンチンなどのカルテノイド色素は黄斑部に存在し、老化を防ぎ、有害な青色光から黄斑を護ります。ケール、ほうれん草、パセリ、高菜などに多く含まれています。ω―3脂肪酸はイワシ、サンマ、サバなど背の青い魚に含まれ、ルテインを吸収しやすくします。ビタミンACEは黄斑の老化を防止しビタミンB群、亜鉛は発病の危険因子である心臓病を予防します。ビタミンAはレバー、緑黄色野菜に、Cは果物に、 Bはレバー、豚、魚に、Eは緑黄色野菜、豆類、植物油に、亜鉛は貝類、根菜類に多く含まれます。栄養素ではありませんが漢方薬の八味丸、釣藤散、桂枝茯苓丸などは体質に応じて適切に使用すれば網膜への血流が増加すること、合谷、曲池という手のツボへの鍼治療は脈絡膜の血流を増加させるという報告があります。サケ等の赤い色素であるアスタキサンチン、ブドウの皮のレスベラトロールも予防に有効であることが分かってきました。

 治療法は?
「萎縮型」にはありません。「滲出型」には新生血管を特殊光線で焼きつぶす『光線力学療法』や、
新生血管を萎縮させる薬液を硝子体内に繰返し注入する「抗YEGF療法」があります。
しかし、これらは既に発生した新生血管を攻撃するだけで、
新生血管の発生を防ぐ 根本的な治療法ではありません。
 発病、視力低下を防ぐには予防が第一です。
ほとんどの年令とともに進行する眼疾患は、フリーラジカルによる酸化的障害や、栄養素の欠損によって生じる。
その他 一般的に、視力の維持に有用なことは、砂糖、飽和脂肪酸 、アルコールの制限、禁煙、規則的な運動である。
※ クロム;   穀類、肉類、魚介類、グレープフルーツ、ハーブのタイム、玄米、海藻、乾魚、オレンジ
※ ビタミンC;  パパイヤ、みかん、芽キャベツ
※ 亜鉛;    穀類、貝類(カキ)、根菜類
※ ビタミンB;  レバー、豚肉、魚
※ ビタミンE;  緑黄色野菜、豆類、植物油
※ ビタミンA;  レバー、緑黄色野菜
表Ⅰ カルテノイド色素(ルテイン、ゼアキサンテン)を含む果実と野菜
ちりめんキャベツ(Kale)(ケール) 21,900
Collard Greens 16,300
ホウレン草(調理後) 12,600
ホウレン草(生) 10,200
パセリ(生) 10,200
たかな 9,900
アニス 6,700
セロリ 3,600
わけぎ 2,100
ニラ 1,900
ブロッコリー 1,900
レタス 1,800
エンドウマメ 1,700
カボチャ 1,500
芽キャベツ 1,300
西洋カボチャ、とうもろこし、黄ピーマン、ピーマン、キュウリ、オリーブ 500~700
(マイクログラム/100g)
OCULAR SURGERY NEWS 1999 VoⅠ 黒木 要訳
2.白内障の予防
  • ビタミンC.E..クロム.カルテノイド色素の摂取が有効
  • 危険因子;大きな海洋魚に含まれるメチル水銀は成人の初期の核及び後のう下白内障の誘因となる。
  • 紫外線やタバコも危険
  • ビタミンC  300mg 食前×3回/日
  •  

        UVカットレンズ (紫外線よけ) 色は薄茶色のサングラスが良いです。最も良いのがゴーグル型です。 

                   

        眼鏡の上にかけるクリップオンタイプです。横からの日差しを避けるような物が良いでしょう。                                          
                 



    サングラスの側面のすき間から入る紫外線に注意が必要。耳側から入った紫外線は角膜で屈折して眼の鼻側に集中。
    正面から入る 紫外線よりも大きなダメージを眼に蓄積します。
    これを
    コロネオ現象と呼びます。



    ➂ 紫外線に注意しましょう。帽子や日傘など。横からの日差しを避けるような帽子が良いでしょう。
    禁煙にも心掛けましょう。

               

       ビタミンCや緑黄色野菜などやブルーベリーなど。

    ゴマやハスの実、マツの実、ハブ茶、黒豆、くるみなど。

     

                    

    ブロッコリー     人参         ほうれん草     トマト      ピーマン    ブルーベリー等 

           

    ⑤ 眼球をこすったり、押さえたりしない。

     

3.緑内障の予防
  • ビタミンC.クロム.カルテノイド色素
  • クロムの欠損は眼圧を上昇させる。しかしクロムを取りすぎると鉄の吸収が抑制され、鉄欠乏性貧血を生じることもある。
4.糖尿病性網膜症の予防
  • 砂糖の摂取を厳しく制限すると網膜症が改善する場合もある進行した増殖性変化や新生血管は回復しないが、網膜毛細血管瘤や、滲出班、虚血性の網膜領域は改善する。
  • 血糖を上昇させやすいものは特別な食物だけでなく、一般的な食物でも加工されすぎて栄養分の純度のたかくなったものである。糖尿病の人はあまり加工されていない新鮮なものを食べる必要がある。
  • 精成された食物又は砂糖を多く含む食物によるダイエットではクロムか゛不足し、白内障、緑内障にはよくない。
  • NIHの研究によると、大量のクロムは糖尿病性網膜症に有効であり、血液検査所見を改善させる。
  • 生体フラボノイドはブルーベリー、ブラックベリー、ストロベリー、ビルベリーなどイチゴ類に含まれ微少血管壁の強化に有効であり、糖尿病による全身の合併症に有用である。
5.悪性近視(成人でも進行がとまらない近視)の予防
  • この患者では、赤血球内のクロムが少なく、バナジウムが相対的に多くなっている。最近のアメリカ人は外洋の大きな魚や養殖のニワトリを食べる傾向が大きいためバナジウムが増加しクロムが減少している。
6.電気刺激による網膜神桂保護と視覚機能の回復
  • 緑内障や網膜色素変性症では、何らかの原因により、緑内障では網膜神経節細胞が、網膜色素変性では視細胞が予定された死に陥り細胞死に至る。これらの細胞は死んでしまうと再生することはない。このため、細胞死を抑制して、より多くの細胞を生存させることが現在とりうる治療戦略である。
  • 神経細胞を電気的に賦活させることが神経細胞に神経保護的作用を及ばすことがこれまでに知られていた。
  • ラットの視神経を切断した直後に視神経を電気刺激(視神経刺激法)し、7日後に生存しているRGC(網膜神経節細胞)の密度を調べると、電気刺激をしていない群では健常網膜のRGCの細胞密度の54%しか生存していなかったのに対し、電気刺激を行うと84%のRGCが生存していた。
  • 次に、角膜に電極を置いて網膜を電気刺激する方法(経角膜電気刺激法)でも神経保護効果があるか検討した。結果、視神経刺激法と同程度の保護効果があることがわかった。さらに視細胞に対しても保護効果があるかどうかラットを用いて検討したところ、視細胞に対しても保護効果があり、視細胞の変性が約2週間遅延した。
  • 次に、虚血性あるいは外傷性視神経症患者に対して治療を行い、その効果を検討した。治療後、外傷性視神経症患者5例のうち4例の視力が改善し(.>0.3logMAR)、前部虚血性視神経症患者5例のうち2例の視力が改善した。これらの患者について、経過を観察中であるが、視力の悪化や、合併症は起こっていない。
  • このように電気刺激は、網膜神経細胞に対する新しい神経保護治療法として大いに期待できると考える。
第109回日本眼科学会総会より
森本 壮 氏発表
 

1.正常眼圧緑内障について

黒木  悟
  • 一番多くみられる緑内障は原発開放隅角緑内障と言われ、40才以上の成人の17人に1人発病し、眼圧(眼球の硬さ)が高くなり放置すれば20~30年かけて視野が狭くなり失明します。しかしその90%は眼圧が21mmHg以下と正常範囲にあり、これを正常眼圧緑内障(NTG)と呼び、中途失明の大きな原因となっています。(表 1)
2.何故視野が狭くなる?
  • 眼内で房水が絶えず産生され、徐々に隅角から眼外に流出し、眼圧が一定に保たれていますが、隅角に何らかの障害が生じ水が目の中にたまると眼圧が高くなり血液か゛眼内の血管に流入しにくくなり、網膜上の視神経線維が酸素欠乏になり徐々に死滅してゆきます。NTGでは眼圧が 正常でも視神経線維への血液循環が悪いか、線維が酸素 欠乏に弱いため同じことが起こります。正常人では視神経線維は、初めは約120万本あり、それらが眼底の視神経乳頭に集まり束になって後頭部の光を感じる脳に情報を伝え、視野 視力が生まれます。毎年約5000本づつ失われ、80才では2/3になりますが、視野はほとんど正常です。 緑内障ではもっと早く失われてゆき、約半分になっ てはじめて視野の異常に気づきます。通常は鼻側(内側)から視野がかけてゆき、1度失われた視野はほとんど回復しません。(図 1, 2)
3.診断は?
  • 初期は自覚症状がほとんどないので、40才以上の人は毎年眼科専門医による検診を受け、眼圧だけでは診断できないので眼底検査で視神経乳頭の陥凹(へこみ)の具合を調べ、異常があれば視野検査などの神経線維の状態を調べる検査を受けることが必要です。
4,治療は?
  • 10~15mmHgを目標に、点眼薬で眼圧をできるだけ下げます。点眼で眼圧が十分に下がらないか又は昼間は下がっていても夜間に眼圧が高く視野が狭くなる場合は、レーザー治療や手術治療を行います。1日中眼圧が下がっていても視野が狭くなる場合は血流改善作用を もつ高血圧の治療薬(カルシウム拮抗薬)の内服を行う場合 もあります。長期的な効果は不明ですが、漢方薬の八味丸、釣藤散、桂枝茯苓丸などは体質に応じて適切に使用すれば、網膜への血流を、鍼治療は目の裏の血流を増加させること又、アントシアニンやアスタキサンチン、イチョウ葉エキス、低周波電気刺激治療は、視神経細胞を 保護するという学会報告があります。
5,予防法や注意すべきことは?
  • 片頭痛、近視、冷え性、狭心症、睡眠時無呼吸症候群などのある人はNTGを発症しやすく、進行しやすいので眼科検診が特に必要です。NTGの人は水を一度に多量に飲んだり、ネクタイをきつく締めたり、強く力むようなこと(管楽器など)、コンピューターの長時間使用などは避けましょう。
表  1      緑内障の種類         有病率
原発開放隅角緑内障(正常眼圧緑内障) 3.92% (3.60%)
原発閉塞隅角緑内障 1.12%
続発性緑内障 0.78%
発達緑内障(先天性) 極少数

図 1

図 2

   鼻側視野欠損

神経線維の測定方法
  • ①視野検査
  • ②網膜神経線維層解析
眼圧に影響を与えるもの
  • 体位: うつむきで高くなる。
  • 角膜厚: うすいと実際より低く測定される。厚いと逆になる。日本人の角膜中心厚は0.53mm前後
  • 近視矯正の角膜手術を受けた人は角膜が薄くなるので実際より眼圧が低く測定されるので要注意。
  • 運動:有酸素運動(ジョギング・エアロビクス)眼圧下降の報告あり、制限必要なし
  • 水泳:有酸素運動なのでそれ自体は問題なし・ゴーグル着用で眼圧上昇報告あり
  • ヨガ:体位(逆立ち等)により15mm~20mmHg眼圧上昇座位より仰臥位のほうが高い・側臥位になると左右差を生じる(下の方の眼が1.2mmHg高い)
  • コーヒー:1~4mmHgの眼圧上昇の報告ありカフェイン含有の飲食物は注意?多少の眼圧上昇はあるが一時的
  • アルコール:飲酒でむしろ眼圧下降・ワイン2杯以上で下がる報告あり・因果関係不明、全身疾患を考慮優先
  • 楽器:吹奏楽器には要注意(トランペット・オーボエ・パスーン等)・ピアノ等他の楽器は心配なし

運動によって体型だけではなく視力も維持できる可能性がある。

新しい研究で、定期的な運動によって加齢黄斑変性(AMD)のリスクが最高で70%低下する可能性が示唆されている。

AMDは変性性の眼疾患であり、後極部の黄斑という領域にある感光性細胞の機能が停止する。AMDは年齢60歳以上の人において重度の視力低下の主な原因となっている。

AMDは滲出性AMDと萎縮性AMDの2タイプに分かれる。

萎縮性AMDでは、患者の黄斑にドルーゼンという沈着物が溜まる。この2タイプのAMDのうち萎縮性AMDの方が一般的であるが、萎縮性AMDは滲出性AMDに移行する可能性がある。

滲出性AMDでは、黄斑の下に異常血管の増殖がみられ、この血管から網膜に血液が漏れる。

研究者らは、生活様式が活動的で、1週間に3回以上運動をする高齢者では滲出性AMD発症のリスクが70%低いことを見出した。

運動とAMD

この研究では、ウィスコンシン州ビーバーダムに住む年齢43-86歳の男女約4,000人を15年間にわたって追跡した。参加者には生活様式と運動習慣についての質問と詳細な眼科検査を5年毎に実施した。

結果は『British Journal of Ophthalmology』に掲載されているが、4人に1人が活動的な生活を送り、一汗かく程度の強度の身体運動を1週間に3回以上行っていることがわかった。

体重、コレステロール値、年齢等の加齢黄斑変性の他のリスクファクターについて調整した後、生活様式が活動的な人ではあまり動かない人と比べ滲出性AMD発症のリスクが約70%低いことがわかった。

また、定期的に12ブロック以上歩く人でも加齢黄斑変性のリスクは30%低下した。

研究者であるウィスコンシン大学医学公衆衛生学部のM.D. Knudtson氏は、食事等の他の要因も加齢黄斑変性のリスクに影響を及ぼす可能性があると述べる。しかし、身体活動は滲出性AMDに関連がある典型的な血管壁の炎症および不整を減弱させることが知られている。

さらに、活動的な生活を送る人はあまり動かない人よりも「生物学的に」若い可能性があり、本疾患は加齢に関連があるために滲出性AMDのリスクが低下する可能性がある。





 
2024年04月  黒木眼科医院


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